おっちゃんのタクシー

実は、このタクシーに乗っているあいだの写真は1枚もない。
後から考えると、おっちゃんはすごくいいヒトだったに違いない。
ちょっと悪いことしちゃったかな、と心を少し痛めたす〜なのです。
それは、こんなことがあったから・・・
↓↓

バンコク、南バスターミナル。
2台のタクシーに乗車拒否(バンコク市内はすごい渋滞だから)をされて、困っていたす〜一家は
あるタクシーの運転手のおっちゃんに手招きされた。
白髪の、初老の、ちょっと痩せてるおっちゃん。

助かった、と思いきや、このタクシー、ぼろぼろ。
トランクがちゃんと閉まらずに、荷物用の紐で固定している。
走り出したら、エンジンなのか、ギヤなのか、ちょっと壊れてるらしく、
「ガッ、ガッ、ガッ……」とすさまじい音がしている(速度が上がるとしなくなるが)。

おっちゃんは、英語も、モチロン日本語も、しゃべれない。

そんな状態で、走り出したタクシー。
す〜と子供たちは後部座席、だんなは助手席。
…と、いきなり、おっちゃんがメーターの下にあるボタンをいじっている。
何してるんだァ〜
すごい渋滞だから、手動でメータを上げてるのか??
だんなと二人で顔を見合わせてたら、おっちゃんは、タイ語で何か言ってる。
身振り手振りだと、「何にも心配すんな」って感じなんだけど、
絶対あやしいよ〜
だんなに、「ねえ、ひどいようだったら、降りて、他のタクシーに乗ろうよ」と。

そんな私たちの疑心暗鬼を全然感じていないのか、
おっちゃんはしきりにタイ語で話してくる。
そのうち、タクシーはすごい渋滞にはまり、外はものすごい雷雨になった。
おっちゃんは、私たちに話しかけながらも、しきりにメーターのボタンをいじっている。
だんな「そんなに心配しなくても、ちゃんと多めにチップやるから、ズルするんじゃないぞ〜」
す〜「そーだよねえ。ほかのタクシー拾えないかねえ」

一向に話をやめようとしないおっちゃん…
だんなと私は苦笑い。
娘たちにも話しかけるが、娘たちも???という顔。
オマケに自分の飲んだミネラルウォーターをすすめてくるので、丁重に(?)お断りした。

おっちゃんは、タイ語がわからない私たちに、一生懸命、道の名前や建物の説明をする。
タイ語で「雨」という単語も教えてくれたりした(もう忘れた(汗))。
おっちゃんは、す〜のデジカメを見て、「写真撮れ」みたいな格好をしたけど、
す〜は素直に撮る気になれなかった。

そのうち、娘たちがおもしろがりだした。
「ペッブリー通り」に来た時におっちゃんが「ペッブリー、ペッブリー」と言っていたら、
娘Bが「ペッブリー、ペッブリー」…
おっちゃんも、おもしろがって、更に何か言ってくる。
そのうち、娘が「ありがと〜」と言ったら、おっちゃんがだんなに、
「これは、タイ語では何ていうんだ?」というニュアンスで聞いてきたので、
だんなが「コップンカッ〜(ありがとう)」と教えると、おっちゃんは、
ちょっかいを出している娘たちにむかって「ありがと〜」「ありがと〜」
と言っていた…。

タクシーの中がすごく楽しい雰囲気になってきた…
す〜もちょっとは気持ちが和んできたが、
まだ「ホントに、料金は正しいの?」っていう思いは消えなかった。


そうこうしているうちに、ものすごい渋滞の中を進んできたタクシーがホテルに到着。
料金は150THBしなかった。
だんなは200THB渡した。

タクシーを降りたあと、だんながす〜に言った。
「このあいだ、ホアランポーン駅から王宮までのタクシー代が、100THBだろ、
今日は時間的にも距離的にも、その3倍以上乗ってるよな…
きっと、あのメーター壊れてたんだよ、だから、いじってたんだろう」
そのときのタクシー代なんて、全然知らなかったす〜。
(次の日に乗ったタクシーだって、結構メーターの上がるのは早かった)

…おっちゃん、他のタクシーが乗車拒否するようなものすごい渋滞だってわかってるのに、
困ってる4人を見て乗せてくれたんだ。
メーター壊れてて、自分が損するかも、なのに。
降りる時も、ずっと娘に「ありがと〜、ありがと〜」って言ってたよ。
子供が好きなおっちゃん。
なんか、疑いまくって、すごく悪いことしちゃったかな。
おっちゃんはそんなこと気がつかなかったのかもしれないけどね。
ごめんね、おっちゃん。


この日の夜、「今日、何が楽しかった?」と娘たちに聞いた。
娘たちは「おっちゃんのタクシー」と答えた


おしまい

inserted by FC2 system